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ナーダム

ナーダムナーダムの食文化

「 那达慕上烤羊香。 」

那達慕はモンゴル族の歴史ある伝統祝日であり、「那達慕」はモンゴル語の音訳で「娯楽・遊び」を意味し、一般に夏秋の水草豊かな時期に行われる。那達慕の核心は「男児三芸」――競馬・摔跤(搏克/ボフ)・弓術である。競馬場では騎手たちが馬を駆けさせる――「草原赛马马…

ナーダムは長い歴史をもつモンゴル族の伝統祭礼であり、美食はその祝いに深く織り込まれた、欠かすことのできない存在です。数ある料理のなかでも、もっとも象徴的なのが丸焼き羊です。表面は黄金色に焼き上がり、豊かな香りがあたり一帯に広がるその姿は、モンゴル族のもてなしにおける最高の礼を体現しています。

手把肉もまた、長い歳月を受け継いできた伝統の味です。羊肉を大きな塊のまま清水で煮て、手に持って食べる。その簡潔な食べ方によって、羊肉そのものがもつもっとも素直な鮮味が残されます。

一方、モンゴル族の食文化の精髄をなすのが乳製品です。チーズ、乾燥乳製品、クリーム、奶疙瘩、奶豆腐、ヨーグルトなど、その種類はきわめて豊富で、それぞれに独特の風味があります。ナーダムの期間には、バター入りのミルクティーを味わうこともできます。

こうした食べ物は、単に舌を楽しませるためだけのものではありません。その一つひとつに、モンゴル族の遊牧文化が積み重ねてきた深い歴史と生活の知恵が宿っています。競馬、モンゴル相撲、弓射といった競技と食が交わることで、ナーダムという祭りの豊かで色彩に満ちた全景が完成します。

ナーダム / ナーダムの食文化

美食文化

食と意味

モンゴル族のナーダムにおける食文化を全体として見渡すと、そこには祭りの始まりから終わりまで一貫して流れる文化的な論理が見えてきます。

一、「白」を尊ぶ。 モンゴル族は白を尊び、純潔、吉祥、崇高さを象徴する色と考えています。モンゴル族の乳製品は総称して 「チャガン・イデ(白食)」 と呼ばれます。モンゴル族の習慣において、白食は純潔、吉祥、崇高を表し、白食でもてなすことは客人に対する最高の礼のひとつです。

白食はモンゴル族の伝統的な食文化の核心をなします。牛乳、羊乳、馬乳、ラクダ乳を原料とし、凝固や発酵などの技法を経て作られ、その種類は実に多彩です。奶豆腐、奶皮子、ウルモ、バター、ヨーグルト、乳酒など、形も味わいもさまざまです。白食は牧畜民の日常の食卓を支える中心的な存在であると同時に、客を迎える礼儀のなかでは「聖なるもの」を象徴する欠かせない食でもあります。銀の碗に注いだミルクティーを客に差し出すことは、モンゴル族における最高級のもてなしとされます。白食文化には、モンゴル族が「清らかさ」と「神聖さ」に寄せてきた精神的な希求が、食という具体的なかたちを与えられています。

二、「赤」を盛りとする。 モンゴル族の肉料理は総称して 「ウラン・イデ(紅食)」 と呼ばれます。紅食はナーダムの祝宴における、揺るぎない主役です。丸焼き羊は貴賓を迎える最高の礼であり、手把肉は千年を超えて受け継がれてきたモンゴル族の伝統食です。

競技場の周囲では、大きな鉄鍋のなかで、切り分けられた羊肉が豪快に煮えています。店主はそれをすくい上げ、大ぶりの碗へ盛りつけます。熱いうちに一切れを口へ運ぶこともあれば、いっそ手でつかんでそのまま食べることもあります。大きく噛みしめれば、裂けた肉の繊維と豊かな肉汁が口いっぱいに広がります。

この「大口で肉を食べる」食べ方は、モンゴル族に伝えられてきた「豪放刚毅」の民族的気質を、もっとも直接的に味覚へと映し出したものです。そして紅食文化の奥には、自然から授かった恵みへの感謝と、生命の力そのものを尊ぶ心が流れています。

三、「原」を味とする。 モンゴル族の料理の核心にあるのは、「原」——すなわち、食材そのものの本来の姿を信じることです。食材は草原から得て、調理は本質へと立ち返り、調味は食材の持ち味を覆うのではなく、それをさらに明確に浮かび上がらせるために用いられます。

手把肉に必要なのは、せいぜいひとつまみの塩だけです。塩は煮る途中ではなく、鍋から上げる直前に軽く振るだけの場合もあります。牧民が育てる羊は、沙葱やさまざまな牧草を食べて成長します。素材そのものに力があるからこそ、清水とほんの少しの塩だけで、すでに十分な鮮味が引き出されるのです。丸焼き羊もまた、現地で屠ったばかりの新鮮な羊肉を使います。

この一見きわめて簡素な調理の背後には、「大道至简」という考え方があります。余分なものを削ぎ落とした先にあるのは、食材そのものへの絶対的な信頼と、大自然から与えられた恵みへの畏敬です。

四、「礼」を情とする。 ナーダムの美食は、単なる味覚の享楽ではありません。それ自体が礼儀と人情を表す言語でもあります。全羊宴はナーダム大会の絶対的な主役であり、丸焼き羊は貴賓を迎える最高のもてなしです。羊背子、手把肉、焼き羊腿などの民族料理を組み合わせた宴席も、ナーダムを構成する重要な一部です。

乳製品にもまた、濃厚な草原文化が宿っています。ナーダム大会は農畜産物の交易会でもあり、茶店や食堂ではバター入りミルクティーを味わうことができます。こうした食の一つひとつが、草原の人々のあたたかなもてなしを、もっとも直接的なかたちで伝えています。

祭りの食図鑑

節令の食

食の詳解

食味の真を尋ねる

手把肉(手扒肉)

肉・魚介

基本情報

  • 分類:煮込み肉料理
  • 主な地域:内モンゴル全域、特にシリンゴル、フルンボイル
  • 主な食材:草原で放牧された羊(2歳前後が最適)、塩
  • 別名:手扒肉、手抓肉、蒙古手把肉

歴史的由来

手把肉は、千年以上にわたって受け継がれてきたモンゴル族の伝統美食です。本当に本場の手把肉を味わうなら、やはり草原まで来なければならないとも言われます。

その名は、食べ方そのものに由来します。手をきれいに洗ったあと、片手で肉を持ち、もう一方の手に刀を取り、羊の骨に残る肉まできれいに食べ尽くします。

しかし、手把肉は単なる料理ではありません。それはモンゴル族の文化的な象徴でもあり、「私たちの草原への愛、祖先への敬意、生活への情熱が込められている」と語られます。ナーダム大会では、手把肉はもっとも盛大な儀礼の一部となります。家に客が訪れれば、それはもっとも真摯なもてなしとなり、年中行事や祭りでは、団欒を象徴する味となります。

その歴史は、千年以上にわたるモンゴル族の遊牧生活と切り離すことができません。代々草原に暮らし、牧畜を生業としてきたモンゴル族にとって、羊はもっとも重要な家畜のひとつでした。長い遊牧生活のなかで、祖先たちは、羊肉を清水で煮て、余計な調味料を加えず、塩をひとつかみだけ入れることで、もっとも鮮やかな味を引き出せることを知りました。

この「大道至简」の調理法は、遊牧民族が培ってきた「取于自然、敬于自然」という食の哲学を、もっとも凝縮されたかたちで表しています。

文化的意味

手把肉には、脂がのりながら肉質の柔らかな羊が選ばれます。多くは草原の牧場で育った2歳前後の羊です。羊肉をいくつかの大きな塊へ分け、清水を張った鍋に入れて煮込みます。余計な調味料はほとんど使わず、小さなひとつかみの塩だけを加えるか、鍋から上げる直前に軽く塩を振ります。

上手に仕上がった手把肉は、火が通っていても硬くならず、柔らかく鮮やかな味わいがあります。羊特有の匂いも脂っこさも強くなく、消化もしやすいとされます。

牧民が育てる羊は、沙葱やさまざまな牧草を食べて成長します。そのため、ほんの少しの塩と清水だけでも、すでにきわめて豊かな鮮味を引き出すことができます。

手把肉の食べ方には、草原らしい豪快さがあります。熱いうちに一切れを口へ運ぶこともあれば、いっそ手でつかんでそのまま食べ、大きく何度も噛みしめます。裂けた肉の繊維と豊かな肉汁が口いっぱいに混ざり合い、そのまま満足感とともに飲み込みます。

もし脂が重く感じられたら、酸味と塩味のある漬物を数口食べます。するとすぐに口のなかがさっぱりし、唾液が湧いてきます。その酸味を楽しみながら、さらに大きなカップを取り、白酒やビールを一杯飲むこともできます。

手把肉には、モンゴル族の食文化がもつ多層的な意味が込められています。第一に、「待客至尊」。 手把肉は客人へ示すもっとも真摯なもてなしです。第二に、「祭りの味」。 ナーダム大会における手把肉は、もっとも盛大な儀礼の一部となります。第三に、「団欒の味」。 年中行事や祭りでは、手把肉は人々が集うことの象徴です。第四に、「原味の美」。 清水で煮込み、塩だけを加えるという調理法は、羊肉本来の味に対するもっとも率直な自信の表明です。

簡単な作り方

  • 食材:草原羊のスペアリブ(または羊腿)1,000g、塩適量
  • 手順:
  1. 羊肉を大きめの塊(1個約200〜300g)に切り、冷水から鍋に入れます。
  2. 強火で沸騰させてアクを取り、中火に落として約40〜50分煮込みます。肉の大きさに応じて時間を調整します。
  3. 鍋から上げる前に塩で味を調えます。あるいは、取り出したあと塩をつけて食べても構いません。
  4. 熱いうちに手に持って食べ、韭菜花醤やニンニク入り辛味噌を添えます。

コツ:草原で放牧された羊を選ぶと、より鮮やかな味わいになります。煮る際の水は最初に十分な量を入れ、途中で足さないこと。手把肉は「火は通っていても硬くない」状態が大切で、火加減が決め手です。

丸焼き羊

肉・魚介

基本情報

  • 分類:焼き肉料理
  • 主な地域:内モンゴル全域、特にシリンゴル、アルシャー
  • 主な食材:羊一頭、塩、香辛料
  • 別名:全羊宴、烤全羊、整羊烤制

歴史的由来

丸焼き羊は、モンゴル族の盛大な宴席に欠かすことのできない大料理のひとつであり、ナーダム大会や祝祭では絶対的な主役です。それは単に豪華な料理というだけではなく、草原のもてなしの情熱そのものを背負い、貴賓を迎える最高の礼を表します。

ナーダム大会では、もっとも賑やかな場面に丸焼き羊が登場します。その姿が見えるより先に、焼けた羊肉の香りが草原を渡っていきます。そして黄金色に焼き上がった全身が現れると、人々の視線は自然にそこへ集まります。香り、色彩、儀礼性——それらが一つの料理のなかで重なり合います。

丸焼き羊の歴史は、モンゴル族の祭祀と祝祭の伝統に深く結びついています。伝統的な信仰において、羊一頭を丸ごと供えることは、天地、祖先、神霊を祀る重要な供物でした。ナーダム大会そのものもオボー祭祀に起源をもち、丸焼き羊は祭祀の供物から徐々に祝祭の宴へと移り、「神を敬う」食から「人を楽しませる」食へと変化していきました。

その製法もまた、時代とともに磨かれてきました。原始的な直火焼きから、専用の炉でじっくり焼き上げる方法へと発展し、現在では黄赤色に輝く外観、香ばしい皮、柔らかな肉、脂がありながら重くない味わいという独特の風味が形づくられています。

文化的意味

丸焼き羊には、屠ったばかりの新鮮な羊肉を使います。処理をした羊に味をつけ、炉へ入れたあと、開口部を閉じて弱火でゆっくり焼き上げます。

完成した羊は黄赤色に輝き、油を帯びた艶があります。皮は香ばしく、肉は柔らかく、脂がありながらしつこくありません。香りと食感が調和し、独特の味わいを生み出します。

ナーダム会場の美食体験エリアでは、草原の丸焼き羊をはじめとする特色料理を存分に味わうことができます。

丸焼き羊には、モンゴル族の食文化が大切にしてきた高い精神性が込められています。第一に、「待客至尊」。 丸焼き羊は貴賓をもてなす最高の礼です。第二に、「節慶之魂」。 ナーダム大会における揺るぎない主役です。第三に、「草原之味」。 焼き羊の香りが草原いっぱいに広がる光景は、草原文化をもっとも直接的に味覚へ映し出します。第四に、「火の崇拝」。 丸焼き羊は弱火でじっくり焼き上げられ、その調理はモンゴル族に伝わる「火」への崇敬とつながっています。火は草原の人々の暮らしにおいてもっとも神聖な要素のひとつであり、火で食を焼くことは火神への敬意の表現でもあります。

モンゴルミルクティー(鍋茶)

飲み物・佳醸

基本情報

  • 分類:乳製飲料
  • 主な地域:内モンゴル全域
  • 主な食材:磚茶、鮮牛乳、塩、炒米、奶皮子、奶豆腐、バター
  • 別名:鍋茶、塩味ミルクティー、モンゴル塩味ミルクティー

歴史的由来

モンゴルミルクティーは、モンゴル族の日常生活に欠かすことのできない飲み物であり、ナーダムの期間には客を迎えるための重要な飲み物でもあります。内モンゴルのミルクティーには塩味があります。

鍋に牛乳と磚茶を入れ、伝統的な方法で煮出したあと、奶豆腐、チーズ、奶皮子、風乾肉、炒米などを加え、そのまま鍋のなかで煮ながら食べます。

銅鍋が食卓に置かれ、そこからミルクティーを碗へ注ぎます。表面に浮かぶバターをふっと吹き分け、一杯飲み干せば、乳と茶の香りが唇と歯のあいだに長く残ります。

モンゴルミルクティーの起源は、寒冷な地域で暮らしてきたモンゴル族の生活上の必要と深く関わっています。草原では野菜が乏しく、磚茶は豊富なビタミンや微量元素を、鮮乳はタンパク質と脂肪を、塩は電解質を補うものとされました。この三つが一つになることで、栄養を幅広く補い、寒さから身体を温める草原の「万能飲料」が形づくられました。

ミルクティーは白食文化を構成する重要な存在でもあります。客人を迎える際、銀の碗にミルクティーを注いで差し出すことは、モンゴル族における最高の礼儀とされています。

文化的意味

モンゴルミルクティーの作り方には独特の特徴があります。磚茶を砕き、牛乳と少量の塩を加えて一緒に煮立てます。味はほのかに塩辛く、乳香は濃厚です。

おいしいミルクティーには奶皮子、炒米、バターを加え、さらに油炸粿条を数本入れることもあります。碗を持ち上げ、一杯また一杯と飲めば、喉の渇きだけでなく空腹も和らぎ、身体全体が心地よくなります。ミルクティーは木の碗で飲むのが伝統です。

接待用のモンゴル包では、訪れた人々が芳醇なミルクティーを味わいながら、悠揚とした歓迎の曲を聴き、草原の人々のあたたかなもてなしを最初の瞬間から感じます。

鍋茶なら、一度にさまざまな美食を味わうこともできます。ミルクティーだけでなく、その鍋のなかには粿条、炒米、手把肉や風乾肉、奶皮子、奶豆腐などが入り、多彩な味がひとつに集まります。

モンゴルミルクティーには、「草原のぬくもり」という深い意味が込められています。第一に、「高原之暖」。 草原の冷たい朝、一杯の熱いミルクティーほど心と身体を慰めるものはありません。第二に、「待客之礼」。 ミルクティーは草原の人々が客を迎える際、最初に差し出す飲み物です。その芳醇な香りが、草原の人々のあたたかなもてなしを伝えます。第三に、「白食之魂」。 奶皮子、奶豆腐、バター、炒米が一杯のなかに集まるミルクティーは、草原の人々が育んできた「合聚万物」の食の知恵を、味覚として凝縮したものです。

奶豆腐(フルダ)

飲み物・佳醸

基本情報

  • 分類:乳製品
  • 主な地域:内モンゴル全域
  • 主な食材:牛乳、羊乳、馬乳
  • 別名:フルダ、白奶豆腐、チャガン・イデ

歴史的由来

奶豆腐は、モンゴル語で「フルダ」と呼ばれ、モンゴル族の牧民の家庭でよく見られる乳製品です。牛乳、羊乳、馬乳などを原料に、凝固や発酵を経て作られます。形が一般的な豆腐に似ているため、中国語では「奶豆腐」と呼ばれるようになりました。

奶豆腐はモンゴル族の伝統的な乳製品であり、チャガン・イデ、すなわち「白食」に属します。その製造では、鮮乳を発酵させたあと、煮詰めながら水分を取り除きます。

奶豆腐の歴史は、モンゴル族の遊牧生活と深く結びついています。草原では鮮乳が豊富に得られる一方、そのままでは長く保存できません。そこでモンゴル族の祖先は、鮮乳を発酵させ、煮詰め、水分を除き、凝固させる技法を生み出しました。こうして、鮮乳は長期保存できる奶豆腐へと姿を変え、牧民が冬を越すための重要な食料備蓄となりました。

奶豆腐は白食を構成する重要な一品であり、モンゴル族の「以时间换美味」という知恵を体現しています。

文化的意味

奶豆腐の製法には独特の工程があります。鮮牛乳、あるいは羊乳や馬乳を発酵させたあと、鍋へ移して煮詰め、絶えずかき混ぜながら水分を飛ばしていきます。乳液が徐々に濃縮され、一定の濃度に達したら型へ流し込み、冷まして固めます。こうして奶豆腐が完成します。

奶豆腐は白く柔らかな見た目をもちながら、質感はしっかりとしており、乳香が濃厚です。乳製品の種類は豊富で、それぞれに独特の風味があり、「牧民の日常の食生活における重要な一部であると同時に、濃厚な草原文化をも担っている」とされています。

食べ方も多様です。そのまま食べることもあれば、熱々のモンゴルミルクティーへ浸し、奶皮子、バター、炒米などと一緒に味わうこともあります。多彩な食材を集めた一碗は、なめらかで芳醇、味わいに層があり、柔らかくても崩れすぎず、油分があってもしつこくありません。

奶豆腐には、白食文化の深い意味が込められています。第一に、「純潔吉祥」。 奶豆腐は白く、モンゴル族文化において白は純潔、吉祥、崇高を象徴します。第二に、「待客之礼」。 白食は客を迎える最高の礼です。第三に、「草原之根」。 奶豆腐は牧民の日常食の中心であり、草原の遊牧民族が積み重ねてきた知恵の結晶です。

焼き羊腿

肉・魚介

基本情報

  • 分類:焼き肉料理
  • 主な地域:内モンゴル全域
  • 主な食材:羊の後腿、塩、香辛料
  • 別名:烤羊腿、炭火焼き羊腿

歴史的由来

焼き羊腿は、ナーダム大会で広く親しまれている草原の特色美食です。焼き羊腿、手把肉、奶皮子、チーズなどは、モンゴル族居住地域を代表する名物料理として知られています。羊背子、手把肉、焼き羊腿、丸焼き羊、焼き牛排、血腸などからなる民族風味の宴席も、ナーダム大会を構成する重要な一部です。

焼き羊腿の起源は、モンゴル族が遊牧生活のなかで羊を余すことなく活用してきたことと深く関わっています。羊腿は羊の身体のなかでもよく動かす部位であるため、肉質はしっかりとしており、噛み応えがあります。

モンゴル族の祖先は、この羊腿を炭火でじっくり焼くことで、外側を香ばしく、中を柔らかく仕上げ、豊かな香りを引き出せることを知りました。こうして焼き羊腿は、次第に定番料理として定着していきました。

ナーダム大会の会場では、手把肉、肚包肉、焼き羊排などもその場で調理されています。

文化的意味

焼き羊腿には、「草原之味」という意味が込められています。外は香ばしく、中は柔らかく、豊かな香りが広がる焼き羊腿は、草原文化をもっとも直接的に味覚へと映し出す料理のひとつです。丸焼き羊、手把肉とともに、ナーダムの「紅食」文化を支える三本柱を形づくっています。

血腸と肉腸

肉・魚介

基本情報

  • 分類:腸詰め肉製品
  • 主な地域:内モンゴル全域
  • 主な食材:羊血(または牛血)、蕎麦粉、羊腸、羊肉
  • 別名:血腸、肉腸、羊血腸

歴史的由来

血腸と肉腸は、モンゴル族のもっとも特色ある腸詰め肉製品のひとつであり、ナーダム大会でも広く親しまれています。どちらもモンゴル族の伝統料理を構成する重要な存在で、ナーダムの羊料理エリアでは欠かすことのできない料理です。

その起源は、遊牧生活のなかで培われた「物尽其用」の知恵と深く結びついています。家畜を屠ったあと、羊血や羊腸も捨てられるものではありませんでした。

モンゴル族の祖先は、羊血に蕎麦粉や香辛料を合わせ、腸へ詰めて煮れば独特の風味をもつ血腸になること、また羊肉を刻んで腸へ詰めれば肉腸を作れることを知りました。

あらゆる部位を無駄にせず、美食へと変えていく。この「変废为宝」の知恵こそ、草原生活のなかでモンゴル族が生み出した独特の食文化です。

文化的意味

血腸と肉腸には、「物尽其用」という草原の知恵が宿っています。羊血、羊腸、羊肉を余すことなく美食へ変えることは、大自然から与えられた恵みを大切にし、それに感謝するモンゴル族の姿勢を表しています。血腸の「赤」と肉腸の「赤」は、ともにナーダムの「紅食」文化を構成する重要な一部です。

羊雑

スープ・羹・粥

基本情報

  • 分類:スープ/煮込み料理
  • 主な地域:内モンゴル全域
  • 主な食材:羊の内臓(心臓、肝臓、肺、腸、胃など)、羊骨スープ
  • 別名:羊雑湯、羊雑碎

歴史的由来

羊雑は、草原の食文化のなかでも、とりわけ日々の暮らしの気配を色濃く宿す料理です。心臓、肝臓、肺、腸、胃などの羊の内臓を主な材料とし、羊骨のスープとともに煮込んで作ります。ナーダムの羊料理エリアでも、羊雑は重要な位置を占めています。

その起源は、モンゴル族が遊牧生活のなかで羊を余すところなく活用してきた知恵と結びついています。羊を屠ったあと、羊肉だけでなく、内臓も決して無駄にはできない食材でした。

モンゴル族の祖先は、羊の内臓と羊骨を一緒に煮ることで、深い味わいのスープと柔らかな内臓料理が生まれることを知りました。こうして羊雑湯は、草原でもっとも「煙火気」——日々の生活の匂い——を感じさせる美食のひとつになりました。

文化的意味

羊雑の調理には細かな手間がかかります。まず羊の内臓を何度も洗い、匂いを取り除きます。下茹でしたあと、羊骨と一緒に煮込み、葱、生姜、花椒、塩などで味を整えます。

完成したスープは味わいが濃厚でありながら澄み、内臓は柔らかく、強い臭みがありません。スープには厚みのある鮮味と香りがあります。

熱々の一杯を飲めば、身体が温まり、食欲も自然と戻ってきます。

羊雑には、「草原煙火」という意味が込められています。羊雑湯は、草原の生活そのものをもっとも身近に感じさせる料理のひとつです。熱い一碗を飲み干すことは、草原の牧民にとってもっとも素朴なぬくもりのひとつなのです。

アムス(吉祥粥)

スープ・羹・粥

基本情報

  • 分類:粥・羹料理
  • 主な地域:内モンゴル昭烏達盟(オンニュド)地域
  • 主な食材:黄米、牛乳、クリーム、バター、ヨーグルト、黒糖
  • 別名:吉祥粥、什錦粥、アムス

歴史的由来

アムスはモンゴル族の伝統的な什錦粥で、「吉祥粥」とも呼ばれます。オンニュド地域に広く伝わり、その歴史は千年以上に及びます。

アムスは、火祭り、オボー祭祀、ナーダム、冠婚葬祭、寺院法会など、重要な場面で食べられる具だくさんの濃い粥です。アムスの製作技法は、開魯県で県級無形文化遺産に登録されたのち、2022年には通遼市の市級無形文化遺産項目に登録されました。さらに2024年、オンニュド旗は《アムス(吉祥粥)製作技法》を第8次旗級無形文化遺産項目へ加えました。

アムスの歴史は、モンゴル族の祭祀伝統と深く結びついています。火祭りやオボー祭祀などの重要な宗教儀礼において、アムスは欠かせない礼儀食です。

アムスには、白食版と肉食版の二種類があります。白食版は牛乳で黄米を煮、クリームやバターを加えたもの。肉食版は牛羊肉と米、ヨーグルトなどを組み合わせます。

白食版のアムスは純潔と吉祥を象徴します。一方、肉食版では牛の胸腔骨を18〜25時間煮込み、肉が骨から外れるほど柔らかくして、紅棗や干し葡萄などを加えます。

この「白」と「赤」をともに備える特色によって、アムスはモンゴル族の食文化における「白食と紅食の融合」をもっとも独特なかたちで表現しています。

文化的意味

白食版アムスは、まずクリームを沸騰させてから水を加えます。そこへヨーグルト、黒糖、塩、水に浸した米を入れ、弱火でじっくり煮込み、最後にバターを混ぜ込みます。

肉食版アムスでは、牛の胸腔骨を18〜25時間煮込み、肉が骨から離れるほど柔らかくしたあと、紅棗、干し葡萄などを加えます。

アムスは多種多様な食材を一碗へ集めたモンゴル族の伝統的な什錦粥です。その一杯には、「合聚万物」という食の知恵が凝縮されています。

アムスには、「吉祥如意」という深い意味が込められています。第一に、「祭神之粥」。 アムスは火祭り、オボー祭祀、ナーダム、寺院法会など、重要な場面で食べられる礼儀食です。第二に、「吉祥之意」。 「吉祥粥」という別名をもつアムスを食べることは、新しい一年の吉祥と順調を願う祈りでもあります。第三に、「白紅交融」。 アムスには白食版と肉食版の両方があり、モンゴル族の食文化における白食と紅食の融合と調和を表しています。

地区分布

地域の食文化
地域 ナーダムを代表する特色美食
シリンゴル盟 丸焼き羊、手把肉、石焼肉、羊肉しゃぶしゃぶ、羊棒骨、肚包肉、血腸、肉腸、羊雑、羊頭肉、羊蹄、羊肉串焼き;羊肉餡餅、羊肉包子、羊湯バターロール;シリンゴルチーズ、奶嚼克、奶皮子、奶豆腐、バター、ヨーグルト、ミルクティー;スニト羊肉
フルンボイル市 手把肉、銅鍋炭火羊しゃぶ、ブリヤート包子(皮が薄く餡がたっぷりで、一口噛むと肉汁があふれ、乳香も濃厚);鍋茶、紅頭羊肉串、銅鍋ミルクティー、奶皮子糖葫芦;ロシア式洋食(ボルシチ、壺入り牛肉、ロシア風ソーセージ);フルンボイル・ブルーベリーワイン
通遼市 ホルチン牛肉餡餅(市級無形文化遺産、1日の販売数1,500枚);手把肉、ホルチン蒙古餡餅、創作乳製品
赤峰市 赤峰対夾(無形文化遺産の美食。外皮は香ばしく、中には燻製肉が入り、一口で肉汁があふれる);カラチン王府の無形文化遺産焼肉;モンゴル族の特色ある乳製品・小麦料理、ミルクティー
興安盟 丸焼き羊、無形文化遺産の焼き羊腿、吊羊鮮肉大串;綽爾河の焼き魚、天牧臻牛肉;七彩米糕、扎賚特米;蒙味食集(本格モンゴル料理、芳醇な乳製品、草原焼肉)
アルシャー盟 アルシャー駱駝乳、駱駝乳疙瘩、駱駝乳アイスクリーム;風乾駱駝肉、肉蓯蓉飲料;モンゴル族の烏叉(伝統肉料理)、手把肉、乳製品
包頭市(ダルハン・ムミンガン連合旗) ダマオ特色モンゴル料理(上質な牛羊肉、鮮乳、小麦料理);ダマオ羊肉稍麦、血腸;手扒肉、地元羊肉串(その場で切って焼き、柔らかく肉汁豊か);丸焼き羊、草原しゃぶしゃぶ
バヤンノール市 バヤンノール瓜子
ウランチャブ市 羊背子、手把肉、焼き羊腿、丸焼き羊、焼き牛排、血腸;各種乳製品
甘粛・粛北 伝統焼き羊排(外皮は香ばしく、中は肉汁豊か);本格手把肉(清水でじっくり煮込み、本来の鮮味を残す);ブリヤート包子;抜絲奶皮、手作り奶豆腐、芳醇なミルクティーなどの乳製スイーツ
武漢(木蘭草原) シリンゴル羊の試食、シリンゴルチーズの試食、塩味ミルクティー、揚げ菓子、風乾肉、大鍋煮込み肚包肉

補足説明:

  • 紅食と白食:モンゴル族の食文化には、肉類を中心とする「紅食」と、乳製品を中心とする「白食」という区分があります。紅食では羊肉が中心を占め、丸焼き羊はモンゴル族の盛大な宴席に欠かせない料理、手把肉はもっとも特色ある伝統美食のひとつです。白食は乳製品を代表とし、奶嚼克は新鮮な牛乳を自然発酵・凝固させて作ります。10斤の鮮乳から作れるのは、わずか1斤です。
  • 五畜宴:シリンホトのナーダムでは、「五畜同宴・草原至味」をテーマとする盛大な宴が設けられています。羊、山羊、牛、馬、駱駝という五種の家畜をそれぞれ主題とし、五つの独立した試食エリアを配置します。羊エリアでは丸焼き羊、手把肉など、山羊エリアでは丸ごと煮込んだ山羊や羊肉煮込み、牛肉エリアでは丸焼き牛、風乾牛肉干などを提供します。馬エリアでは酸馬乳と馬乳酒、駱駝エリアでは風乾駱駝肉、石焼駱駝肉、紅焼駱駝掌、清燉駱駝峰、焼き駱駝排などからなる全駱駝宴を楽しめます。
  • ナーダム美食の新しいかたち:現代のナーダムは、伝統的な草原の祭典から、文化と観光が融合する「観光型ナーダム」へと発展しています。美食展示エリアには内モンゴル十二盟市の特色ある品々が集まり、各盟市専用のモンゴル包のなかには多種多様な商品が並びます。同時に、モンゴル式塩味ミルクティーヨーグルトや奶皮子ラテなど、新しい草原乳製品も登場し、若い旅行者の嗜好に的確に応えています。

結びの考察

食の営み

秋風が草原を渡り、五色の経幡を揺らすと、馬頭琴の蒼涼とした弦の響きのなか、ナーダムの炊煙がゆっくりと立ち上り始めます。モンゴル語でナーダムとは「遊び」あるいは「娯楽」を意味します。しかし、草原でもっとも盛大なこの祭りは、昔から「紅食」と「白食」の二重奏なしには成り立ちませんでした。モンゴル族は肉食を「ウラン・イデ(紅食)」と呼び、乳食を「チャガン・イデ(白食)」と呼びます。紅食でもてなすことは情熱を示し、白食でもてなすことは最高の礼を意味する。二つの食文化のあいだには、剛と柔をあわせ持つ草原民族の文化的な基調が浮かび上がります。

丸焼き羊は、ナーダムの祝宴において疑いなく「硬菜」と呼ぶにふさわしい主役です。屠ったばかりの羊肉を数時間にわたり弱火でじっくり焼き上げると、外皮は香ばしく引き締まり、白く柔らかだった肉は全身を黄金色の艶で包まれるまでに変わります。人々が囲んで分け合うとき、小刀で香ばしい皮と柔らかな肉を切り取り、その一口一口に草原のもっとも直接的な豪快さを噛みしめます。一方、手把肉は極限まで簡潔です。羊肉を大きく切り分けて清水で煮込み、加えるのはひとつかみの塩だけ。火が通っても硬くならず、柔らかく鮮やかな味わいがあり、強い匂いも脂っこさもありません。それは、食材そのものの本真に対して草原が抱く、もっとも率直な自信の表明です。

紅食がナーダムの熱気だとすれば、白食はその温厚さです。モンゴル族の牧民は乳製品を貴重な食べ物として大切にしてきました。奶豆腐、奶皮子、ウルモ、バター、ヨーグルト、乳酒……種類は豊富で、ひとつひとつに独特の味があります。そして、塩味と乳香をもつあの一碗のモンゴルミルクティーこそ、祭りの魂のひとつです。磚茶を砕いて牛乳と一緒に煮、少量の塩を加え、炒米、奶豆腐、風乾肉を添える。一杯飲み終えれば、その香りは唇と歯のあいだに長く残ります。

現代のナーダムでは、美食の世界はいまなお広がり続けています。シリンゴルの「五畜同宴」では、羊、山羊、牛、馬、駱駝という五種の家畜ごとに独立した試食エリアが設けられています。粛北草原ではブリヤート包子と抜絲奶皮が並び、無形文化遺産の工房では肉餅がその場で焼かれます。さらに、アルシャンでは長さ80メートルにも及ぶ炉の前で「留客」包子が作られています。草原の美食は、より豊かな姿をまといながら、四方から訪れる客人を迎えています。ナーダムの食で味わうのは、天地が牛や羊へ与えた豊かな恵みであり、その奥にあるのは、自然を畏れ敬い、熱情と率直さをもって生きる遊牧民族の生命哲学です。篝火が燃え上がり、歌声が響き始めると、手把肉の香りとミルクティーのぬくもりが草原の夜色のなかで交わり、もっとも心を打つ日々の営みの気配となって立ち上がります。それは、モンゴル族の人々と天地、そして遠方から訪れた客人とのあいだに結ばれる、もっとも素朴な約束なのです。

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